Shadow of the Batgirl
DCが最近出版している、コミックスとは別の自由な世界観で描く子供向けグラフィック・ノベル作品のうちの1冊、最近は『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』にも出演予定のキャラ、カサンドラ・ケインを主役にしたお話です。
とは言っても、映画版とは違いこちらのカサンドラはコミックス従来のキャラクター設定に近いものになっています。
暗殺者として育てられたカサンドラは、殺人の任務を途中で放棄して逃げてしまいます。殺そうとした相手の発した“娘”という言葉、それはカサンドラが今まで知っていると思っていた“娘”という言葉ではありませんでした。
暗殺のスキル以外をほとんど教えられなかったカサンドラが知っているわずかな言葉の一つである、父からかけられた“娘”という言葉。
街に溢れる言葉に追い立てられるように逃げ場を求めたカサンドラが辿り着いたのは静寂の広がる図書館でした。
図書館の一角を勝手に借りて生活し始めたカサンドラはそこで新しい“娘”という言葉と出会います。
カサンドラはバットガールから“娘”という言葉の本当の意味を知ろうとします。
また図書館生活を送るカサンドラは初めて人と普通の交流をします。
暗殺に失敗してまず出会ったラーメン屋を営むジャッキーは、お腹の減ったカサンドラにラーメンを食べさせてくれたり、お風呂や服等生活に必要不可欠なサポートをしてくれます。
図書館でバットガールについて子供達に教えていたバーバラはアシスタントになる代わりにバットガールについて詳しく教えてくれます。
学生でアメフト選手のエリックは夏季休暇に図書館のアシスタントをしており、カサンドラにおすすめの本を教えてくれたり、読書クラブを通して本当の自分の気持ちを共に探すことになります。
カサンドラの父による犯罪の波で揺れるゴッサムにはもうバットガールはいません。図書館生活を通じて様々な言葉や気持ち、そしてバットガールというヒーローの存在を知ったカサンドラが、迫りくる父の脅威にどう争うか。
シリアスな題材でありながら子供らしい真摯さと軽やかさでアイデンティティの獲得を描く名著です。